本当のところ どうなの?
先日、サークル活動の帰りに、たまにはお団子でも買って帰ろうと、和菓子屋さんに立ち寄ろうとしたらお店の前に数人の人がいた。
混んでいるんだなと思って、近づいてみたら何と同じサークルの人たちだった。
若い女性や青年、そして私と同じくらいの年齢の女性2人と男性。
その中の男性が、皆さんにお団子を注文し、振舞おうとしていた。
あれっ、ちょっとまずい時に出合ってしまったなと思った。
男性が、あれっ?と言いながら、私の顔を見た。
仕方なく、あら、お団子を買って帰ろうかと思ってと言ったら、これから、団子を食べるんだよ、一つどう? ご馳走するよ と言ってくださった。
嬉しかった。
お団子をご馳走してくださると言う、その一言の声かけに、その人の優しさを感じた。見ても無視?見て見ないフリをする人が多いなかで、見習うべきことと
感じ入った。
えっ〜 申し訳ないわと私は言った。
でもお腹が空いている、お団子を食べたいなと思った。自分の中では、すっかりご馳走になる気満々になった。
えっ〜 申し訳ない、その言葉は確かに言った、ウソではない。
ご馳走になります、この言葉は口篭った気がする。
団子が運ばれて来た、みんな、思い思いに団子を選び食べ始めた。
その前に、1人の女性が私はいらないわ、お団子を買うからと言った。
1本、残っている。
あれっ?その女性が団子を手に取れば
あらあら、私の団子はない…
なーんだ 、私の分はなかったんだ。
口先だけで頼んでくれてはいなかった。
私はどうぞと女性に声かけた。
何度も声掛けしたが、その女性はいらないときっぱり言い続けている。
団子が埃にまみれてしまう、私は意を決して(オーバーだねー) では、お団子、頂きますと言って手に取った。
その時、団子を振る舞ってくれたその男性の表情が微妙に動いた。誰も気が付かない、私だけがそれを見逃さなかった。
今、思えば、食べるの?図々しいなと言われたような感じの表情だった。
あっ、食べてはいけなかった?んだ。
なんだ、なんだ。
正直に言ってよー。
あーあー、もう手に取ってしまったよ。
今更、戻せない。
食い意地の張っている私、1本残して置いてはいけない、誰かが食べないと、と勝手に思ってしまった。
1本残った団子は、私が食べなくても、若い女性や青年がいる、その人達にもしかしたら、振舞いたかったのかも知れない。
あーあー、またやらかしたよ。
私にお団子、どう?と言ったのはお愛想だったんだね⁈
その表情が物語っている。
もう遅いよー、手に取った物を戻すことは出来ない、引き返せない。
今はコロナ禍なんだから。
ちょっと気まずい思いを心の中で抱きながら、美味しいね!と、皆に聞こえるように言って食べた。
表情の動いたその男性をおもんばかりながら、団子を口に運んだ。
ご馳走様でした、美味しかったです。
皆、ニコニコしている。
あー、あの男性は、本当はご馳走する気はなかったのかも?知れない。
それなのに、後から来て図々しくも、お団子をご相伴させて頂き、ご馳走になってしまった。代金を払う、そんなことは微塵も思いつかなかった。
何とも言えない申し訳なさと、食べなければ良かったなと言う思いを胸に、ご馳走様でしたと丁寧にお礼を述べた。男性は頷いた。
あーあ、失敗した、今度、そう言う事があったら 少し考えてから行動に移そう。いつも優しくお声掛けくださる、その男性はムードメーカーでサークル内を和ませてくださる。ついつい甘えてしまった。
それにしても、私はいらないからと言った女性は、1本 足りない事が分かっていたのだろうか。それでいらないと言ったのだろうか?
その女性は、お土産にお団子を買うからと言っていて、いくら、どうぞと勧めても食べようとしなかった。
お団子が1本足りなかった事を、すぐ見て判断したんだろうか。
お店の方が親切にお茶を出してくださった、今度は人数分ある、皆でお茶を頂いた。
私はお団子を食べてしまったのに、食べない方が良かったのだろうかと、余計なことを考えながら、家にいるGさんとまだまだ食べ足りない自分への団子を買った。
誰にも気づかれなかった、あの男性の仕草がいつまでも気になった。
翌週、家にあったとらやの小型羊羹を、
あの男性にお礼に持って行くことにした。
どんな思いがあって表情が変わったのか、私には計り知れない。
でも、ご馳走するよと言ってくださったそのときの気持ちは、本物だったと思いたい。
1本残った団子を、私ではなく他の誰かに食べさせたかったのかも知れない。
それにまさか本当に食べるなんて、思わなかったのかも知れない。
私はその意を汲めず、おなかを満たしてしまった。
翌週、あの男性に先日のお礼を丁寧に述べた。お声かけくださったこと、とても嬉しかったと言いながら、家にあったものだけどと羊羹を差し出した。
いや〜 そんなつもりはなかったのに、かえって悪いなぁ、申し訳ないなぁと、恐縮している様子の返事がかえって来た。
そして、サークル活動の話に移った。
あー、良かった。一応、私のささやかな気持ちを伝えられた。
次回からはよくその状況を見て、判断できるよう行動しよう。
気まずい思いをしながらのお団子なんて、いくら食いしん坊の私でも、もういやだもの。
追書
男性の表情が変わろうと、変わるまいと、そんなことは関係なく、翌週には何か、ご馳走になったお礼をしなければと思っていた。
家にある、何かしらのお菓子で。
丁度タイミングよく、兎のパッケージのとらやのミニ羊羹があった。
顔色を伺ってのお礼ではない、嬉しい気持ちを現したい、そう思ってのこと、誤解なきようお願いしたい。